ここでは、弊社の「金融アドバイザリー」を中心とした、金融支援の業務をご紹介します。
「金融アドバイザリー」業務のうち、弊社は、「特殊状況(スペシャル・シチュエーションズ)」とよばれる、市中銀行から資金調達できなくなったステージにおける資金調達と、それらに関連するM&Aを、もっとも得意としております。
Contents
「特殊状況(スペシャル・シチュエーションズ)」とはなにか
「特殊状況」とはなにか
「特殊状況(スペシャル・シチュエーションズ:Special Situations)」とは、銀行など、市中の通常の金融機関から資金調達ができなくなったステージをいいます。
不良債権などへのディストレスト投資や、関連する金融サービスの分野において、おもに米国系の投資ファンド等で用いられる金融用語です。
たとえば、慢性赤字や債務超過などによって、金融機関による債務者格付けが、「正常先」以下に格下げされている場合や、あるいは、再生支援協議会のもとで、銀行向けの返済をリスケジュールしている場合などが代表的なケースです。
そのほか、民事再生や会社更生などの法的再生手続下での、運転資金・設備資金の調達(いわゆるDIPファイナンス)といったケースなども、投資ビジネスの観点からは、「スペシャル・シチュエーションズ」に分類されるファイナンスです。
わが国では、銀行などの預金取扱金融機関は、金融庁が定める「金融検査マニュアル」にしたがって、貸出先(債務者)を格付けすることが義務付けられています。この格付のことを、「債務者格付け」」といいます。
債務者格付けは、「正常先」「要注意先」「要管理先」「破綻懸念先」「実質破綻先」「破綻先」の6つの格付けに分かれています。(「要管理先」は「要注意先」の一部なので、正確には5つなのですが、ここではわかりやすくするため、6つとしてご説明します)
わたくしどもが「特殊状況」とよんでいるのは、これらの格付けのうち、「要管理先」を含む、「要注意先」より格付けが低くなっているステージです。
上記に挙げたような、慢性赤字や債務超過、あるいは法的整理といったケースでは、「債務者格付け」のルール上、市中の銀行からの資金調達は、非常に困難となるか、あるいは完全に不可能となります。
なぜ「特殊状況」では銀行融資を調達できないか
銀行などの預金取扱金融機関は、預金者から集めた資金を、貸出金などの資産として運用しています。預金取扱金融機関は、預金者の預金が、どの程度安全な資産に見合っているかを判定するために、貸出金をはじめとするリスク資産について、個別にそれらの回収可能性や価値について自己査定をおこなうことが義務づけられています。
この自己査定に用いられるのが、「債務者格付け」です。
預金取扱金融機関は、「債務者格付け」のルールにもとづいて、貸出金について自己査定を実施し、債務者の格付けに応じて、貸倒引当金の計上や、償却を実施しなければなりません。
計上する貸倒引当金の額は、債務者格付けが低くなるほど、大きくなります。
倒産リスクが高い債務者向けへの貸付債権には、リスクに相応にみあった貸倒引当金を計上して、貸倒損失の発生に備えておかなければ、金融機関としての健全な経営を図ることができないからです。
そして、「特殊状況」のように債務者格付けが低いステージになると、銀行から融資を調達しにくくなる最大の理由が、ここにあります。
もし格付けが低い先に、さらに追加融資をすると、貸し増された金額分だけ、さらに貸倒引当金を計上せざるを得ず、それは金融機関の収益を圧迫します。
したがって、慢性赤字や債務超過、リスケジュール中の企業など、すでに格付けが低くなっている先には、金融機関は、積極的に融資できないのです。これが民事再生案件など、法的整理先となると、ほぼ不可能となります。このような背景で、銀行は、ファンドのように、再生ファイナンスを手がけられないのです。
銀行のような預金を受け入れる金融機関は、このような仕組みで、不良債権の比率を抑制して、預金者の資金を守り、わが国の金融システムを守っているのです。
「特殊状況」でのファイナンスの可能性は、千差万別
もっとも、これらは、あくまでも原則論であって、金融機関は、貸出先の財務内容をもとに、形式的に格付け判断をすることはありません。
貸出先の経営状況、業績悪化におちいった原因、経営計画の進捗状況、今後の業績の見通しなどを総合的に評価して、格付けを決定しています。
そのため、たとえば、再生支援協議会の手続下に入っている債務超過の企業でも、再生ファンドから調達せず、メインバンクからの融資調達に成功するケースもあります。
一方で、リスケジュールもしておらず、業績も赤字基調ではあるものの、債務超過にまでは至っていない企業であっても、銀行借入がまったくできない状態のケースもあります。
また、債務者格付けは、そもそも金融機関が自己査定で使うという性質上、相対的なものなので、同じ債務者企業に対する格付けでも、A銀行は「要管理先」、B銀行は「破綻懸念先」、というふうに、異なる格付けで判定しているケースもあります。
このように、債務者格付の判定の仕方は、千差万別であり、債務者企業ごとに、業績の推移や経営の見通し、取引金融機関のスタンスなどを個別に、緻密にみる必要があります。この点が、「特殊状況」における再生ファイナンスの成否の目利きを難しくしています。
債務者格付けルールそのものが、銀行経営の健全性を維持するための制度ですので、「特殊状況」のステージでは、銀行が再生ファイナンスに応じることは難しくなるのです。そのため、銀行以外の、特殊な金融プレイヤーが必要とされる局面なのです。
補足: 金融検査マニュアル廃止後の対応について
なお、2019年12月に、金融庁が金融機関への検査に用いていた「金融検査マニュアル」が廃止されたことにより、金融機関は、自己査定による債務者格付けについて、自行独自の定義や運用方法を構築しやすくなりました。
そのため、それぞれの金融機関のリスク許容度や戦略を織り込んだ融資方針を、より柔軟に打ち出しやすくなっています。金融機関が「個性」や「戦略」をだしやすい、新たな時代を迎えたといっても良いでしょう。
もっとも、「金融検査マニュアル」廃止後も、債務者格付けの基本的な考え方そのものは変わっておらず、従来の格付けの考え方をベースとして、さらに各金融機関の考え方を肉付けしながら、運用がつづけられています。
自社の格付けについて、詳しく判定をご希望される方は、どうぞ弊社までお気軽にお問い合わせください。
「特殊状況(スペシャル・シチュエーションズ)」におけるファイナンス
ここでは、「特殊状況」において、どのような考え方であれば資金調達を成功できるのか、その考え方をご説明します。
なお、本サイトでは、一般の方にわかりやすくご説明するため、ファンド形式でなく自己勘定投資(プリンシパル・インベストメント)を行っている投資会社や事業会社、いわゆる投資銀行業を営むプレイヤー、ノンバンク等も含めて、「ファンド」等と総称して表現しています。
「特殊状況」からのリカバリーの考え方
まず、同じ金融を手がける会社であっても、「銀行」と「投資ファンド」では、許容できるリスクがまったく異なる点に、留意する必要があります。
下図は、市中の銀行が、債務者企業に求める一般的な財務内容を、再生ファイナンスを手がけるファンド等のそれと比較したものです。
このように、再生ファイナンスを手がけるファンド等の場合、対象企業のバランスシートについては、債務超過(あるいは実態債務超過)を許容するけれども、フロー面では、PLはともかく、少なくともキャッシュフローだけでも黒字であることが最低限の条件になってきます。
「特殊状況」のように銀行から借入がむずかしい局面で、キャッシュフローが赤字であると、いつ資金繰り破綻するかわからない状態ということを意味しますので、投資ファンドもビジネスである以上、そのような企業にファイナンスをするわけにはいかないからです。
そして、再生ファイナンスのご相談案件には、じつは、キャッシュフローですら赤字、または毎月に安定して黒字化できていない状態の企業が多いのです。
このような場合、投資ファンドから再生ファイナンスを調達するアレンジメントだけでなく、まず経営の方法を大幅に見直して、本業が生むキャッシュフローを黒字にする道筋をつけるための経営支援を行わないと、対象企業は資金繰り破綻してしまいます。
わたくしどもHOPEキャピタルが、現場の経営改革と、ファイナンス双方をにらみながら、いわば「二刀流」の支援をさせて頂くことを、非常に重視している点は、そのためです。
銀行はもちろん、投資ファンドですらも、対象企業のキャッシュフローを(ときには社内から)黒字化させることはできないため、どうしても、わたくしどものように、社内の経営改革と、外部からのファイナンス調達の双方を同時に手がける専門家が必要になるのです。
まずは「ザル会社」体質から脱皮する: 自己革新による社内ファイナンス
経営者の皆さんは、「ザル会社」という言い方を、ご存知でしょうか。
銀行に限らず、投資ファンドの担当者も、しばしば「ザル会社」という言い方をします。
「ザル会社」とは、本業のキャッシュフローが赤字で、いくら資金調達をしても、おカネが会社から流出している会社のことを示す隠語です。ザルのように、いくら水(おカネ)を入れても、底から抜けていく会社のことです。
(失礼な言い方とは承知しておりますが、経営者の皆さんに、銀行やファンドの担当者が、内心では、どれだけシビアに再生ステージの企業をみているかをおわかり頂くために、本稿では、あえて「ザル会社」という実務的な表現をさせていただいております。)
再生ファイナンスのご相談案件の中には、このような「ザル会社」の体質におちいっているケースが少なくありません。
小規模企業よりは、どちらかというと、中堅企業クラス(売上高が数十億円規模のクラス)や、大型のベンチャー企業のほうにこそ、こうした「ザル会社」体質のケースが多い傾向があります。
「特殊状況」で再生ファイナンスに成功する最大のカギは、いかにして、この「ザル会社」から脱皮できるか。自力でおカネを稼ぐ会社になるか。そのような自己変革を図る姿勢を示せるか・という点に尽きます。
その点さえブレていなければ、たとえ債務超過であっても、数か月後に資金繰りがショートする局面であっても、銀行が融資に応じられない債務者区分のステージであっても、投資ファンド等から再生ファイナンスを調達することは十分可能です。
中小企業の再生では、「選択と集中」は通用しない
また、近年の中小企業の再生マネジメントでは、単純な「選択な集中」が通用しません。
赤字の事業や商品を廃止し、利益率が高いビジネスだけを選別すれば、会社全体も黒字化する・という「選択と集中」にとりくめば、事業再生は成功する・という時代は、すでに終わっています。
大企業では、不採算事業や余剰の社員をもつ余裕がありますが、中小企業では、すでに必要最低限のギリギリの人員で運営しており、余剰の事業部門などないケースがほとんどです。
2000年代以降の長期にわたるデフレ傾向の中で、中小企業の多くは、すでに緊縮財政に取り組んでおり、人員の削減・事業部門の廃止などを実施済みであり、「選択と集中」の余地そのものがもはや存在しないのです。
また、商品や事業部門を、短期間にむやみに廃止すると、売上高と粗利益高が急激に縮小して、PLのサイズに比して、バランスシートの負債水準が相対的に大きくなってしまう・という現象も無視できません。
中小企業では、もともと余剰人員が少ないため、仮に、なんらかの商流を廃止して売上がなくなってしまうと、固定費の削減効果がたいして見込めない一方で、その商流の売上と粗利益がまるごと消失するため、むしろ、赤字の傾向に拍車がかかってしまいます。
そのため、中小企業の事業再生では、いまある資源を再構築して、「ザル会社」を脱皮して利益体質を構築する必要があります。
具体的には、一つは、仕入と在庫を中心とした原価を、コンマ数ポイント水準でも適正化すること。二つは、本業のなかで、対象企業の強みを活かした、あらたな商流や商品の開発をすることが、必要不可欠になります。そして、それらを実現するために、「ビジネス・コア」の基盤づくりを進める必要があります。
中小企業の黒字化にあたっては、コストカットという単なる「捨てる」発想ではなく、いまあるヒト・モノ・情報・カネを、いかに「活かす」かという視点が重要になります。要は、「本業を成長させる」という視点も織り交ぜて、再生戦略を考えるということです。
アカデミックな表現をすれば、経営資源の「再結合(リ・コンビネーション)」をするプロセスということになります。経済学者シュンペーターの説いた、古い要素と新しい要素を結びつけるタイプの「新結合(ニューコンビネーション)」の一類型であり、このような新陳代謝こそが、わたしたちの社会の源泉です。
これは、非常に難しい命題であり、多面的な専門性が求められますが、しかし、この点が明確になれば、「特殊状況」でのファイナンス成功には、光明がみえてきます。
現代の中小企業の再生は、「成長戦略づくり」に等しい
このように、「特殊状況」における再生ファイナンスの局面は、じつは、「いかにして本業を成長させるか」という戦略的な方向づけをする局面といえます。
たしかに苦境ではあるのですが、成長のチャンスでもあります。対象企業の歴史において、のちに「中興の時代」と位置づけられるような、再成長をはかる時代とすべき局面でもあるのです。
奇手奇策や、本業とまったく異なる新規事業に手を出すのではなく、まずは「いまいる社員、設備、商品・サービス、情報、最低限のレバレッジ(投資)」をどう活用するか。いまそこにある、手がとどく資源について、活用の仕方をみなおすことによって、いかに本業を成長させるか。
そういった成長戦略をきちんと確立する、絶好の機会でもあるのです。
さまざまな企業の社史をみても、倒産の危機に、しっかりと乗り切って大手企業に成長した企業は、枚挙がありません。
「特殊状況」のように、投資ファンド等からの資金調達にたよる局面であっても、上述のように、投資ファンドは銀行と違って、バランスシートのリスクはとってくれても、本業のリスクまでは背負ってくれません。金融機関からすれば、そこは経営者が、自力本願的な覚悟をもって、マネジメントとリーダーシップによってとるべきリスクだからです。
しかし、かといって、既存の経営陣だけでは、困難な局面を打破することはむずかしいのも、また実情です。
そこで、わたくしどもHOPEキャピタルでは、この成長支援もカバーした上で、「特殊状況」でのファイナンス支援を展開しています。
ハンズオン支援を培って得た豊富なナマの経営再生ノウハウをもとに、「いまある資源と強みをどう組み合わせれば、本業は成長するのか」という視点から、事業や商品、ヒト・モノ・情報・カネを、優先順位をつけ、再構築を図るご支援をしております。
単なる数値だけでビジネスを評価するのではなく、その業界他社の動静や、対象企業の強みや歴史、社内のヒト・モノ・情報・カネの現状を総合的にみて、本業の各セグメントの「潜在力」を評価したうえで、「ビジネス・コア」の再構築による収益基盤づくり、本業を強化する新たな打ち手などをご支援しております。
(「ビジネス・コア」については、本サイト内の「ハンズオン支援について」でご説明しておりますので、どうぞこちらをご覧ください。)
過去の事例にかんがみても、弊社の支援によるこうした経営面での取り組みが、投資ファンド等にむけた資金調達のプレゼンでも、有効に働いているものと考えております。
絵空事や机上の空論ではなく、対象企業の現場にある経営資源をきちんと観察して、それらを活かした経営計画を策定しているため、投資ファンド側も、対象企業へのファイナンスを実行しやすくなるという点が大きいものと考えております。
また、弊社が経営支援したことによって、銀行側が、対象企業への理解が進み、「特殊状況」の債務者区分にあるにも関わらず、一段と支援姿勢に踏み込んで下さり、ファイナンスに応じてくれた・というケースもございます。
わたくしどもHOPEキャピタルでは、このように、単なるファナンスアレンジだけでなく、そうした成長戦略づくりもカバーした上で、「特殊状況」における資金調達をサポートしています。
「特殊状況」における再生ファイナンスのアレンジ
ここでは、「特殊状況(スペシャル・シチュエーションズ)」とよばれるステージにおける、弊社の資金調達アレンジメントと、それらに関連するM&Aについて、ご説明します。
事前デューディリジェンスによる再建可能性の精査
再生ファイナンスのご相談案件につきましては、わたくしどもでは、まずデューディリジェンスをさせて頂き、「資金需要はなにか」と「成長戦略をあらたに確立することで、再建できる可能性はあるか」という二点を、重点的に精査させていただきます。
ファイナンスのご相談案件の場合、わたくしどもは、投資ファンド様等からのファイナンスをアレンジする「ファイナンシャル・アドバイザー(FA)」の立場となります。
わたくしどもは、FAとしての責任を適正に果たすにあたり、再生ファイナンスを調達される会社様にとっても、また、リスクをとって再生ファイナンスに応じてくださる投資ファンド様にとっても、双方にとってハッピーな出会いとすることを、非常に重視しております。
ですので、「なぜおカネが必要なのか」「そのおカネがファンド等から提供されたとして、はたして本当に経営を良化させる方向で活用されるのか」という「資金使途」の点を、FAとしての客観的立場から検証をさせていただきます。
また、「ビジネス・コア」を中心とした社内の経営体制についても精査をおこない、それらを再結合することで、「実現可能な成長戦略をえがくことができるかどうか」を、検討させて頂きます。
それらの二点を、わたくしどものように、対象企業様としがらみのない客観的な立場のFAが、しっかりと検証することによって、再生ファイナンスを依頼する投資ファンド様からも、また既に取引のある銀行様からも、信用が生まれやすくなります。
二つの資金調達について同時に取り組む①: 社内からの調達
再生ファイナンスのアレンジメントにあたっての、弊社での一般的な資金調達の取り組みをご説明いたします。
まず第1優先順位として、「ザル会社」体質を脱皮して、本業が生むキャッシュフローを改善する取り組みに着手いたします。
当然ながら、多くの場合、資金調達の必要額をそのまま社内収益から調達することはむずかしいですが、社内で本業が生むキャッシュフローを少しでも拡大させることで、資金調達額をおさえることができ、結果として、資金調達にともなう資本コストを抑制することができます。
資本コストとは、投資ファンド等からローン形式で調達する場合であれば金利、投資等で調達する場合は、投資に伴うコストや諸手数料など、おカネを調達するときに必要となるコスト全般です。
近年のわが国の銀行融資は、国際的にみて異常なほどの低金利がつづいていますが、本来、倒産リスクの高い企業体は、高い資本コストを支払わないと、資金調達できないのが、金融ビジネスの基本です。そのため、「特殊状況」におちいった企業が、再生ファイナンスを得るときの資本コストは、銀行融資よりは一定程度高くなります。
もちろん、たとえば米国の再生ファイナンス業界と比べると、まだまだ非常に低コストで、良心的な設定水準なのですが、それでも、調達する企業にとっては、コストは安いに越したことはありません。
資本コストをなるべく低く抑えるためにも、まずは、本業のキャッシュフロー改善が、第1の優先順位として取り組むべき事です。
本業のキャッシュフロー改善を優先するその他のメリットとしては、ニューマネー調達を相談する投資ファンドや、既存の取引銀行からの信用評価も良化する・という副次効果もみこめます。
近年では、金融庁の銀行指導の方針や、マクロ的な金融緩和情勢を背景として、たとえば投資ファンドからの調達を進めていたところ、業績良化の兆しを評価してくれたメインバンクが、より踏み込んだ支援として、債務超過にある企業への再生ファイナンスに応じた・といった事例も増えています。
そのためにも、まずは「自社のキャッシュフローを少しでも良化させる」「借りるよりも、自前でカネを稼ぐ体質になる」という、あたりまえの企業努力を最優先すべきです。
とくに、経営基盤である「ビジネス・コア」が弱い会社ほど、「ザル会社」体質におちいることが多く、人事・財務・営業体制の三つを、重点的に、かつスピード感をもって、改善を図ることが有効です。
二つの資金調達について同時に取り組む②: 投資ファンド等からの調達
このような取り組みと並行して、ほぼ同タイミングで、第2優先順位として、社外の金融機関(投資ファンド等)からの資金調達についても、準備を進めます。
このとき、ひとくちに「投資ファンド」といっても、それらが選好するリスクとリターンは、まったく異なっており、それぞれが別のビジネスモデルといってもよいくらいに、千差万別である事に、留意する必要があります。
この「それぞれの金融プレイヤーの個性のちがい」をきちんと把握しながら、適切なマッチングを行うことが、再生ファイナンス成功のカギです。
弊社で「特殊状況」とよんでいる、市中銀行からの調達がむずかしいステージへのファイナンスを手がける主体は、規模や属性に応じてさまざまです。ファンド形式で運用されている主体もあれば、自己勘定投資(プリンシパル・インベストメント)を手がけている主体もあります。
ファンド形式のものの中には、運営母体が事業会社であって、運営母体の戦略的意図にそった投資を手がけている会社もありますし、純粋な金融ファンド会社である場合もあります。
また、よく知られているファンドのように、近年では、大手商社や都市銀行、地方銀行が母体であったり、主要出資者になっているものも増えています。
さらに、再生ファイナンスのようなディストレスト投資が、ファンド出資者との組合契約上、許容しうるかどうか・という点も、各社個別により異なりますし、ファンドが組成された時期によっても異なります。投資に求めるリターンの水準や、ロットもまちまちです。
また、自己勘定投資を手がける主体も、ファンド勢と同じく、投資サービスを手掛ける戦略上の意図や、対象とする業種、投資ロット、出口戦略もまちまちです。
このように、本稿ではご説明をしやすくするために「投資ファンド等」と総称してご説明を進めてきましたが、実際には、それぞれの再生ファイナンス提供主体のビジネス上の戦略や目的、思惑は、千社千様です。
また、それらについての情報は、原則として非公開な情報が多く、東京を中心とした都市部で、専門家同士の閉じた情報交換によってディールソーシングやクロージングをしているものが大半です。
下記は、弊社が過去に再生ファイナンスをアレンジした実績のある金融プレイヤーと、弊社のネットワークを通じてアレンジ可能な金融プレイヤーとを一覧したものです。
上記の図のうち、とくに再生ファイナンスでよく用いられるファイナンス手法を、赤文字で記載いたしました。
これらの中でも、メザニンローンとABLスキーム・WBSスキーム等をくみあわせた手法や、メザニンローンとファクタリングを組み合わせた手法が、もっとも再生ファイナンスに適しているものと弊社では考えております。
また、再生ファイナンスの実行にあたり、いわゆる第二会社方式のようなスキームで対象企業の組織再編を伴うケースもあり、新株発行や株式承継、事業譲渡、会社分割のようなM&Aスキームを伴うものもあります。
第二会社方式とよばれる、事業再生で一般的なM&Aスキームは、次のようなものです。ここでは、債務超過のケースで、M&Aを使った債務カットスキームの事例を記載いたしました。
実際のケースでは、このようなスキームとあわせて、対象企業への運転資金を、さらに他の投資ファンド等によって資金調達したり、案件の再生ニーズに応じて、会社分割とは別に、新株の発行や株式の承継を実施したりしますので、さらに複雑なスキームになります。
(なお、この事例では、機密保持の観点から、実際の事例から一部変更しております)
再生ファイナンスのスキームの組成は、資金調達にせよ、M&Aなどの組織再編にせよ、一件一件が手づくりであり、対象企業様の再生ニーズや資金繰りニーズによって千差万別です。
わたくしどもは、「その再生ファイナンス手法は、対象企業の財務リズムにかなっているか」「対象企業のビジネスモデルにあっているか」「再生ファイナンスをすることで、経営課題を解決し得るか」という本質を、もっとも重要視して、案件のご支援をさせて頂いております。
再生ファイナンスを手がける主体自体が、よく一般には知られていない主体が多く、投資スキームも専門家でないと理解できないものが多いがゆえに、ともすれば、エリート専門家が、中小企業を、「会社」や「職場」ではなく、「モノ」のように扱って収益を稼ぐだけのケースに落着しがちです。
そのような観点から、わたくしどもは、再生ファイナンスを調達される対象企業の皆さまにとっても、また、再生ファイナンスに応じてくださる投資ファンド様にとっても、双方にとって幸福な出会いとすることを意識して、FA業務をご提供しております。
そして、最終的には投資ファンド等を卒業されて、いずれは「正常先」として、市中の銀行融資の世界に復帰されることを、第一義的に考えて、ご支援しております。
御社が、銀行からの資金調達に困難を生じていたり、再生ファイナンスをご検討される場合は、どうぞお気軽にお問い合わせくださいませ。
守秘義務契約を締結したうえで、御社の経営のお悩みをお伺いさせて頂きます。